Saturday, July 28, 2007

そうめんの研究: 半田そうめんは太くてうまいぞ

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梅雨もあけてすっかり夏ですね。夏にはそうめんがうまいです。いつもは地元岡山のそうめんか、小豆島のそうめんを食べているんですが、ことしは友人に「半田そうめん」というのを教えてもらいました。これがその半田そうめん。「竹田製粉製麺工場」というところのものです。

handa tenobe soumen

写真1. 半田手のべそうめん

徳島県美馬郡つるぎ町(旧半田町、つるぎ町は一宇村・貞光町・半田町が合併して平成17年3月1日発足)で作られているもので、200年の伝統を誇る。そうです。これがそうめんとは思えないほど太い。食べているとうどんかと思うぐらいです。そして、しかし、かなりうまいんです。というわけで、いったいどれぐらい太いのかほかのそうめんやひやむぎとくらべて調べてみることにしました。

今回買ってきたうどんとひやむぎとそうめんたち。いろいろな産地、いろいろな生産者のものが売られいていましたが、今回は地元岡山の業者をリスペクトして「かも川」のものを中心に買ってきました。左から、かも川手延うどん、かも川手延細うどん、かも川手延ひやむぎ、かも川手延そうめん、小豆島の「島の光」手延素麺、それから半田手のべそうめんです。

udon hiyamugi soumen

写真2. うどん、ひやむぎ、そうめん

さっそく1ぽんづつとりだして、ならべてみました。ついでにノギスで太さを計測。断面が円形ではないので、長いところと短いところを測ってみました。ついでに長さも物差しで計測。ならび順は上のパッケージの写真とおなじです。

うどん比較

写真3. めんの太さ比較(数字はめんの断面の太さ(mm)とめんのながさ(cm))

こうして見ると、半田そうめんは、かも川のひやむぎと同じぐらいですね。一体どうなってるんでしょうか。現在の日本農林規格によると、機械製麺のばあい、そうめんは断面の直径が1.3mm未満、ひやむぎは1.3〜1.7mm未満、うどんが1.7mm以上、という区別になっているそうです。機械ではなく「手延べ」の場合は、1.7mm以上が「手延べうどん」、1.7mm未満は「手延べそうめん」または「手延べひやむぎ」となっており、手延べにかぎっていえばそうめんとひやむぎに区別はないことになります(参考文献[1])。

しかしこの規格が制定されるにあたっては紆余曲折があり、参考文献[1]に「2004年に手延べそうめん類の日本農林規格及び品質表示基準が廃止され、新たに手延べ干しめん日本農林規格(特定JAS)が制定されました。品質表示基準は従来の機械麺の乾めん類品質表示基準に統括されました」とある通り、2004年に手延べそうめんに関する規格が改訂されています。規格が改訂されるにあたって、2002年ごろに農林水産省から、「新規格では半田手のべそうめんは『半田ひやむぎ』になる予定です」という話が旧半田町にあったそうです(参考文献[2])。ポイントはふたつあって、まずは太さ。旧規格は今の機械製麺のとおなじでそうめんは1.3mm以下となっていたため、新規格でもそれを踏襲しようとしていたようです。半田そうめんは1.3mmよりふとい! そうめんじゃなくてひやむぎになる! 半田そうめんピンチ! それからもうひとつは「手のべ」の表記。旧規格では、小麦粉を練ってよりをかけて引き延ばし、熟成したものを「手延べ」としていたのだが、新規格の改正案では「小引き」と「庭干し」と呼ばれる部分が手作業でないと「手延べ」と呼べないことになっていた。「小引き」というのは「よりをかけて引き延ばす」行程。いまではこの行程でほとんどの業者が機械の補助を使っているため、このまま改正されると「手延べ」とはいえなくなってしまう。ピンチ!

しかし伝統的な「手延べ」を守るために作られる規格のせいで、伝統的に「手延べそうめん」と名乗っていた半田手のべそうめんが名前を変えざるを得なくなるとすれば、かなりおかしなことだといえましょう。そんなわけで、「手延べ」に関しては太さは1.7mm以下であればそうめんとも、ひやむぎとも名乗ってよいことになったので、半田そうめんもどうどうとそうめんを名乗れることになったのです。よかった。パチパチ。

ほっとしたところで、さっそく、たべくらべてみた。「半田そうめん」は、こしがあり、うどんのようなかんじです。うまいね。ほかの「そうめん」はぜんぜんちがうので、半田そうめんと太さが似ている「かも川ひやむぎ」をたべてみます。これも、やはりおなじようにいい感じのこしがあります。しかしかなり食感が半田そうめんとは違う。むしろ「かも川細うどん」のほうが半田そうめんと似た印象をうけました。半田そうめんをたべた第一印象の「うどんのようなかんじ」はまちがっていない。なぜだろう、とモグモグしながら考えたのだが、どうも、太さとめんの長さにひみつがありそうだ。

「かも川細うどん」と「ひやむぎ」、「半田そうめん」のめんの断面の短い直径のほうは約1.4mmでほぼ同じです。長いほうの直径と、めんの長さの比をとってみると、

  • かも川細うどん: 250/2.25= 111
  • かも川ひやむぎ: 250/1.55= 161
  • 半田そうめん: 180/1.70= 105

「半田そうめん」と「かも川細うどん」の数値が似ています。おそらくこれが食感に影響し、似たような雰囲気を醸し出しているのではないだろうか。今回は時間がなくて実施できなかったが、この仮説を検証するために、「かも川ひやむぎ」の長さを18cmていどに切ってゆでてみるという実験をする必要がある。

しかし、私の実家は愛知県なのですが、こどものころ食べたひやむぎは、こんなにこしがなかった気がする。このあたり(西日本)のそうめん(とひやむぎ)はうまいなあ。今度実家に帰ったら愛知県のひやむぎも比較してみることにしよう。

なお、「竹田製粉製麺工場」のそうめんは通販可能です。webで通販しているところもありますが、友人曰く、直接注文するのがいちばんお得、とのこと。Webサイトは無いようなので、電話して注文してください。竹田製粉製麺工場 電話:0883-64-2020。

参考文献

  1. そうめんとひやむぎ事情
  2. おはようとくしま 「そうめん」か「ひやむぎ」から どうなる半田手延べそうめん,四国放送,2002

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